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と、盛子が傍から又さつきのをかしさを思ひ出したらしく、そつと注意した。
と、云ひながら徳次の肩をつかんで押しもどした。誰もが疲労のための一種煤すゝけじみた鎮静を現していたにもかゝはらず、練吉だけは明かにまだ興奮していた。と云つて悪ければ、恐しく深い印象を与へられたものの如くであつた。そして、一応の取調べを受けに、二人の責任者が参考人として自動車に乗せられ、本署のある町まで同行を求められたときに、練吉は自分も乗う込まうとして加藤巡査にひきとめられた。
「こゝの消防演習をやつたのだ。そんなに騒ぐことはない」
「往診?ふむ、ふむ」
「なにしろこんな狭い田舎ぢやから、何事もねつうやる。それをやらんと後がうるさい。自然評判を落すといふことも起るかな」
「いゝかね。あんたの身体はどこも悪くない」
「それあ、さうだらうなあ。なんしろ広い海のこつた!――ねえ、君」
その時、突然練吉は、房一がさう云ひかけたまゝ当惑した表情になつたのを見た。
「さうですね。さつきからどうもさうらしいと思つていたんですが、失礼しました」
「あら、ほんとうに沢山とれたんですね」
座敷へ案内されて、まず自分の居どころが決まると、携帯の荷物をかたづけて、型のごとくに入浴する。そこで一息ついた後、宿の女中にむかって両隣の客はどんな人々であるかを訊きく。病人であるか、女づれであるか、子供がいるかを詮議した上で、両隣へ一応の挨拶にゆく。
「何んの。面倒だからこのまゝ行かう」